長野スクール第3回、6グループがプラン発表へ

  • 2015.02.09
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まちエネ大学長野スクールは2014年1月30日、『今回がキモ!』と言われている第3回がはじまりました。ファシリテーターはNPO法人森のライフスタイル研究所の竹垣さんです。

今回はゲスト講師として、NPO法人再エネ事業を支援する法律実務の会代表で、弁護士の水上貴央先生です。

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実は、各グループでA4の紙1枚程度にまとめてくるよう、事前に水上先生から宿題が出されていました。ふたつのポイントが提示されていました。

  • 「できること」と「やりたいこと」を分けて考える。その上で、自分たちはどの部分を担うのか?
  • 自分たちの事業、自分たちの担う部分の「価値」は何か?

それぞれのグループの発表を聞いて、水上先生からその後のグループディスカッションで議論すべきポイントが伝えられました。

 『木質バイオマスによる地域巻き込み“ひと肌脱がせ隊”』高尾康太さん他

王滝村は、山林原野が95%あるということで、バイオマスを活用していきたい。そのためには、村の人に一肌脱いでもらわなくてはいけません。先日メンバーで、王滝村ツアーを実施、現地で話し合ってきました。王滝村の現状の把握として、旅行者数、燃料の使用量などを調査。自分たちができること、やりたいことをが、実際に求められているのか?村の人を、巻き込みながら自然エネルギーを導入し、未利用木材の活用など、村の誇りにつなげたい。

村に眠る宝、地域資源を活用し、最エネ導入の一歩として薪ボイラーの導入をする。薪ボイラーはツールとして、村の活性化につなげる。村の人たちがひと肌ふた肌…どんどん脱ぐ、巻き込むためには、早いうちに話をしていくことが必要。村役場や、大滝の湯、木材業者など、地域全体にヒヤリングをして、これからどうしたい?を聞き出す。ひとりひとりの声をしっかり聞く、人対人のコミュニケーションを大事に考えていきます。

《水上先生からのアドバイス》

  • 大滝の湯の現状は? →年間利用者数は7,000人、燃料代が約150万円/年
  • 観光客と地元の人の比率は? →地元の人が2~3割ぐらいの印象。登山者やスキーヤーが多く利用している
  • この温泉を維持できるのか…売り上げが増えるか、コストが下がるかのどちらか。もちろん、両方あっても良い。薪ボイラーを導入して、村人みんなで薪を持ち込めばコストが下がる。温泉で食べ物を売ったり、貸切料金を設定したりすれば売り上げが上がる。とにかく温泉が維持されることが大事。
  • これからヒヤリングするのでは発表に間に合わない、仮説を立てて検証のためのヒヤリングを実施する順序で進める。
  • 補助金を使っても構わないので、収支のバランスを整えること。
  • そして仮説を明確に立てて、誰がどんな形で、ひと肌脱いでいくのか、具体的に「こうだね」という発表を期待しています。

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『小型分散型バイナリー発電』酒井義兼さん

まちエネのスキームを作ろうということで、小型バイナリーに注目しています。バイナリー装置の開発が中心となっているが、事業化となると大型のほうが成功するだろう。小型かつ分散型、いわゆる低温で発電できる装置だと事業が成り立たないのか?IHIが発売している。高山村の七味温泉が、日本で最初に「温泉熱バイナリー発電機」を導入していて、先日見学に行った。

《水上先生のコメント》

  • 水を沸かして発電するのは燃料代がかかるから、60度台まで太陽光で温め、残りをバイオマスで温めるという仕組みか?メイドインジャパンの製品ができると良い。
  • 純粋に木質バイオマス小型発電機と、バイナリー発電機のどっちが合理的かという話。バイナリーが合理的であるとなれば、事業化が成立する。
  • 現時点でどちらなのか?バイナリーにすることで、トータルで効果的なのかを検証する必要がある。
  • 成立しないのであれば、何が変わったら成立するかを検討する。パネルなのか発電機なのか、オーダーメイドだからなのか、段階を追って理詰めで検討してほしい。

 『バイオガス熱、食を含む再エネ地産地消コミュニティ』岩間正之さん

「食を含む」という文字を追加した。ただ具体的なプランは何もない。地域にとってのエネルギーは何か?という循環、食を含む地産地消、農業林業のコラボです。リスクは、生ゴミは、行政が処理していて償却することがもったいない。でも資源としていくことが、果たして住民に受け入れられるか。生ゴミの3Kイメージを払拭することが必要。生ゴミ処理という言葉を、生ゴミ再生事業にする。経済的な価値は、エネルギーを利用して農林業に活かす。ハウス栽培(アボガド、マンゴー)に結びつける熱源。命ある循環エネルギーとして生ゴミを活かす。小さなコミュニティを作っていきたい。過疎化に歯止めをかけ、既存のところではなく新しく作っていく。そこがモデル地域となって、外から注目をあびて見学者が来るといい。

《水上先生のコメント》

  • 具体的なことはない?でも一歩手前でしょう。出てくるキーワードが「生ゴミ」を中心とした、食とエネルギー循環にフォーカスされている。
  • 具体的に決めてしまいましょう。同じ「生ゴミ」でも「肥料」にするのか「熱」にするのか「バイオガス」にするのか、いろいろある。メインは何?それをまず決める。
  • コミュニティを作るためにも、ここにいる人達が「生ゴミ持っていくよ!」という話になるまで具体的に考えてください。

 『空家活用による再エネ導入、空家をエネ家に』新雄太さん(代理発表:栗田さん)

今日はみなさん都合が悪く、私ひとりしかいませんが、18日に朝日村に集まり、半日ぐらいディスカッションした。日本全国平均で7件に1件、長野県では5件に1件が空家というのが現状。空家と自然エネルギーをどう結びつけるか?モデルケースをひとつということで、朝日村にある元蕎麦屋の、大きなお宅を何とかしたい。自然エネルギーを盛り込んだエッセンスでなく、地域の人達が「おらがまちの」となれば面白い。ぽつんとした一軒家を想像していたのだが、割と周囲に家が存在する。何が地域のお役に立つのか…。自治会組織に飛び込んでいって、ひとつひとつ話を始めようというところから。敷地が広いので、太陽光パネルで街灯でもつけてみる案もある。

《水上先生のコメント》

  • このグループの特徴的なところは、すでに空家があるということ。土地があるなら太陽光だとは思うが、ポイントはそこではなく空家で何をするのか、空家にみんなが集まって何をするかが大事。
  • まちエネ大学の発表的にいくと、プランがどのように広がりを持っていくか、モデル性があるか。
  • 別の空家を借りて、何をしていくかというプランになるかどうか…今ある空家はモデル事業、次をどうするか、現実に空家にみんなで集まって何をするか、具体的に固めてください。

 『りんご薪、スモークチップ販売による果樹農家の活性化』青木信治さん

りんごの木、薪にして全国に発売する。庭木の伐採を請け負って薪ユーザーに販売する。森林の間伐材を薪に加工して販売する。りんごの木や果樹の木をスモークチップにして販売する。信州ブランドにしていく。耕作放棄地を利用して、ビニールハウス栽培をする。

《水上先生のコメント》

  • 非常に価値を意識していると感じた。いくつかのうち、やるべきことを優先順位付け。
  • 3つの中で、大変なものとすぐできるものを区別する。難易度が違うので、課題の大きさも違う。やりやすいものを一番に。
  • やるべきものについては、ビジネスとして成立するかどうか。
  • 3つとも一気に出来るかどうかはわからないが、成立すると思うので、きちっと詰めてもらいたい。

 『ペレット活用(紙薪)』久保田謙三さん

ペレットを活用して、地域に仕事を作りたい。ペレットを作ること、ストーブを販売して継続的にペレットを販売していくこと。そのためには、ペレットボイラー・ストーブ、ペレタイザーが必要。レンタルするなどのアイディアがある。木材・間伐材・りんごの剪定枝などを、粉にして固める。作業をするための場所が必要ということがわかってきたので、作るのではなく売ることにシフトしていく。外部環境で灯油が値下がりしている、ペレットは高くてビジネスとして成立しないのか。ペレットが安く仕入れられれば(真庭)良い。新たに、紙薪(富士宮)のアイディアも出て、石油使用量が削減できれば良い。

《水上先生のコメント》

  • ペレットと紙薪、性能はどうか?優位性があるという証明が必要。
  • 誰に使ってもらうか。使いたくなるか。薪ユーザーは限られているので、選ばれるか。ユーザーサイドから見たメリットをはっきりとさせる。
  • プラントを作るためには、リサイクル業者と提携(予定でも可)が必要。
  • 迷わず行けるところまで…検討してだめだったらやめれば良い。具体的に必死になって検討することが大事。考えるのは疲れるだけでお金はかからない。具体的にしてだめだったら、また別のプランを検討すれば良い。

水上先生のコメント・アドバイスは、発表の中のエッセンスを抜き出して道筋をつけ、次へステップアップするためのもの。否定は一切せず、気持ちに寄り添いながら、大丈夫!こういう方法でいきましょう、と背中を押してくださる感じです。

水上先生からは、グループディスカッションの前に再度アドバイスが追加されました。

「数字の話はすごく大事だけど、細かいものはわからないですよね。細かくなくてもいいから、大まかでも数字を出す。数字を出さないと、他の人が検証できないので、批判の受けようがないんですね。仮置きでもいいので、数字は必ずあげてください。大切なのは、「具体性」と「説得力」。最後の発表が終わったあとに、ほかのチームの人がやってきて「私をチームにいれて欲しい!」となれば勝ち。その場にいる人にわかってもらえる、伝えられる説得性が欲しいのです」

グループワークの75分間、これまでディスカッションしてきたものを、水上先生のアドバイスで整理整頓してもらって、順序だてた有意義な時間となりました。さまざまな資料や実物を持ち寄ったり、情報を共有したり、実際の事業計画に落とし込む作業は大変ですが、みなさんとっても楽しそうでした。

 

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そして、各グループ3分間の成果発表です。

『ペレット活用(紙薪)』久保田さん

りんごの枝を使った紙薪事業、ビジネス化に一本化。紙薪は安価で、ユーザーさんに経済的メリットが大きい。課題として、紙薪自体の熱量データを揃えることが必要。また、ダイオキシンの心配や、灰の処理についても検討が必要。

《水上先生のコメント》

  • ターゲットは誰かをはっきりとさせること。薪ストーブをこれから買う人なのか、使っていても1年目なのか、ずっと使っている人なのか。
  • 住んでいる地域もしぼってみたい。
  • 素人や、市販の薪を買っている人をハイブリッドで取り込めないだろうか。
  • プレゼン的には、薪ストーブを買ったけれど、使えていなくて、来年はちゃんと使いたい人に対してが良いかも。
  • コスト的には「匂い」「講習会実施」など付加価値をつけると良い。
  • ポイントは、ここにいる人が、薪ストーブを導入してみようかと思えるか。

『りんご薪、スモークチップ販売による果樹農家の活性化』青木さん

優先順位をつけてみました。まずは、りんごの木・果樹園の伐採を請け負って、信州りんごの薪ブランドで販売する。次に庭木の伐採。山林に放置されえいる未利用材の薪の順。地元でなく全国へ販売していく。ビニールハウスで野菜を栽培する時に、加温用の燃料を未利用材で。スモークチップ加工は最後。薪とりんごのセット販売をしたほうが良いのではとアドバイスをいただいた。地域貢献の薪ステーションを作り、山の木を利活用する。課題として、薪置き場が行政的にうるさいと聞く。広いスペースがあればよい。

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《水上先生のコメント》

  • 優先順位を決めて良かった。全部は発表できないので、1だけでもよいし、1と2の少しとかにしましょう。
  • 1が実現したら2をするのが良いので、発表でも1を優先してしっかりと計画を。
  • りんごのインターネット販売、薪とセットで補足する。
  • リピート率を高くするために、顧客を囲い込んでいく。今あるお客さんに対して、りんごも販売できるとPRをする。
  • りんご農家も儲かるので公共性が出る。Win-Winな関係。

 『バイオガス熱、食を含む再エネ地産地消コミュニティ』岩間さん

バイオガスメタン。事業系の生ゴミを集め、ガス化したもので発電する。プラントが数千万円かかりそうなので、小型のものができればいい。有効な蓄電装置を作る。数値化として、出資金をどうするか。利用組合一口いくらに設定。電気を使う家庭から少し出資してもらう。データをどうするか。生ゴミは廃棄物対策法・食品リサイクル法にかかるかどうか。循環資源とのからみで、どのような制約があるか。

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《水上先生のコメント》

  • 生ゴミを出す側と、どうコラボするか。法律的に結構大変なので、提案を持っていける程度で十分。
  • どのようなプラントを作るのに、どれくらいコストがかかるか検討が必要。

『小型分散型バイナリー発電』酒井さん

名前を変更『ワクワクぬくもり発電所』、精神とやることが伝わるネーミングに。導入コスト・運用コストのもとになるFITの買取価格。既存の技術のパッケージにするのか、それともコストをかけずに、ペットボトルを集めたり、DIY感覚で作るのか。地域のみなさんで支える発電所になると、気持ちが入る。設備認定してもらえるかが心配。

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《水上先生のコメント》

  • FITはとれる前提でいきましょう。特段、ダメな理由もありません。
  • 合理的だけど、工事で発注するとコストが高くなる。工事費を圧倒的にゼロに近づけるのができるかどうか。それができれば、普及していくだろう。
  • できれば模型なんかあるといい。小さいペットボトル並べて…箱と一緒に、イメージができる。酒井さんなら作れそうですよね。
  • IHI行きましょう、売れないんだから、困ってると思いますよ。DIYの時点で会社が乗ってくるかも。

『木質バイオマスによる地域巻き込み“ひと肌脱がせ隊”』高尾さん他

売上アップで集客する。「王滝の湯」自体が小さい温泉施設で、男風呂6人、女風呂6人。ブランディングとしては「御嶽山の見える、日本で一番小さな温泉」。入浴するには薪をくべてから…という。応援してもらえる人にアピール。村人が薪を持ってくるようになる仕掛けを教えてください。

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《水上先生のコメント》

  • 人に何かをさせようと思ったとき、動機付けには3つの種類があります。ひとつめは「脅す」「ひどいことをする」。今回これは有り得ませんよね。
  • 二つ目は「利益を与える」。薪を持ってきたら100円安くなるとか経済的メリット。
  • 三つ目は「楽しい」非金銭的メリット。そこを考えてみてほしい。どこが楽しい?
  • 薪をくべている写真をFBに投稿する。楽しさの演出。
  • 地元の人に薪を持ってきてもらう、メッセージつき、パワースポット、燃やすと叶う、絵馬みたいなもの。
  • ポイントは動機付けをどうするか、どっちをどう選択するか、組合せでも良い。まちエネ的には、経済的メリットだけで勝負するのは良くない。楽しい価値で勝負するかを考えること自体が楽しいのです。

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最後に、次回の発表にむけて、水上先生からこの日の総括コメントをいただきました。

「長野の特徴として、地域を巻き込んでいくか、行政と一緒にやっていくかが深く検討されていると感じました。地域の公共性とか難しく考えがちですけどね、誰かが楽しくなれば、それは公共的価値があるんですよ。少しずつ誰かがちょっと楽しくなると、それは立派に公共性。どうやったら楽しくなるかを、しっかりと考えていただいて、それがビジネスとして成立することが大事だと思います」

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今回も笑顔いっぱいで、熱いディスカッションを交わされたみなさん。次回はなんと、最終回!

県内各地から、さまざまな方が集まり、ディスカッションを重ねた成果が、事業発表会という形になります。竹垣さんの言葉にもありましたが、発表会が再エネ事業のキックオフとなるよう、期待をしたいと思います。みなさん、お疲れさまでした。そして、水上先生、本当にありがとうございました。