滋賀スクール、「市民農園ソーラーシェアリング」「地域自立型小水力」など6グループが発表へ

  • 2014.01.31
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1月24日、滋賀スクール第3回講座が大津市の滋賀銀行浜町研修センターで開催されました。今回のテーマは「リスクを踏まえて、始めよう!」。NPO法人再エネ事業を支援する法律実務の会・代表の水上貴央弁護士をゲストにお迎えし、各チームの事業プランに磨きをかけました。

まず前半は、滋賀スクール名物の「パーでんねん」で緊張をほぐしたあと、各チームから現時点での事業プランの発表をしました。その発表に対し、水上先生から後半のグループワークで検討すべき課題についてコメントをいただきました。

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水上先生からは冒頭に「今日は、リスクを踏まえて”始めよう”というタイトルにした。リスクばかりを考えていたら前に進めないが、リスクを踏まえないと、前には進めない。そういう視点で、今日はコメントをしていきたい」との挨拶をいただきました。

発表をしたチームは6つ。それぞれのチームの発表概要と先生からのコメントは、次の通りです。

「市民農園でソーラーシェアリングによる市民共同発電所(宝塚市内)」
宝塚すみれ発電所・井上保子さん
最初は「できるかな?」思っていたが、いろいろ動いてきたら、「できるで!」という手ごたえを感じるようになった。都市部の人たちに、食べ物を入り口にエネルギーのことを考えてもらえるきっかけにしたい。農家がやろうとすると、収量がどれだけ減るかがシビアな問題になるが、市民農園ならその問題も起きない。行政(農政課)のサポートも受けやすい。市民農園でとれた野菜を近くのレストランで使ってもらうことも考えている。
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水上「まず、どの程度の規模にするかを決めることが大切。それによって適するお金の集め方が違ってくるので。次に、関係者のリストアップと、各々にとってのメリットを考えることが大事。どうすればwin-winの関係になるかを考えていただきたい。それともう一つ、”お金で返す”という方法だけでなく、もっとほかの形で返す方法がないか考えてみてほしい。」

「地域の人の思いを生かして自治体を動かそう」
環境自治体会議・桃井鈴奈さん
環境自治体会議で、複数の自治体が再エネ事業のためのファンドづくりの議論をしてきた。しかし、お金を出す側の市民の意識がまだ高まっていない。座談会などを開いて地域の人たちの気持ちを呼び起こしていきたい。具体的には、士幌町、生駒市、宇部市で取り組むことをイメージしている。
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水上「プランの具体化を。実際にいくつの自治体でやるのか、どんなプログラムを提供できるのか、どんな体制でやるのか、資金はどう調達するのか、など。なお、資金は最初から補助金をあてにしない方がいい。獲得できないリスクが大きいし、補助金の仕様に合わせるばかりに本来の目的からずれていくことにもなりかねない。取りに行くよりも、自分たちでいろいろやっていくほうがいい。その方がかえって補助金がつきやすいものだ。」

「青山小学校屋根貸しプロジェクト(大津市内)」
立命館大学経営学部教授 ラフパッハ・スミヤ・ヨークさん
青山地区は3000世帯ある。この地区の小学校に、100kWの市民共同発電所を設置したい。災害時のエネルギー供給、環境教育、地域経済の活性化など、社会貢献を重視する。現在の最大の課題は、”公平性”の担保。なぜ、市の施設である学校を一事業者に貸すのか、ということの合理的な説明を学校側から求められている。その他、どのような事業形態でやるのか、地域の意識醸成をどう進めていくか、などといった課題もある。
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水上「モデルとしてはすでによくおこなわれているモデルで、収益性もまず問題がない。収益上に課題があるとすれば、送電線網への距離が遠い場合なので、学校から送電線への接続ポイントまでの距離は確認をしていただきたい。次に、事業形態の議論の前に「誰」がやるのか、ということが重要。誰が担い手で、誰が出資者か、そこを明らかにしていくことが必要。”公共性”については、どれくらいの収益にするか、がポイントになるだろう。むしろ、どこからどういうプロセスで交渉を進めていくのか、ということを考えてみていただきたい。教育委員会よりも再エネ推進課から話をしたほうが前に進む可能性もある。以上、課題はいろいろあるが、逆に、これらの課題さえクリアできれば、事業は実施できる可能性が高い」

「びわこソーラーシップ発電」
山本克也さん

屋形船など小型船に太陽光パネルのせ、「コミュニティシップ」として地域の人たちの憩いの場にしたい。港を「湖の駅」にする、ソーラー釣堀をする、など、いろいろなビジョンがある。収入は、売電だけでは成立しないので、乗船料やレンタル料、広告料などで賄う。あとは、作るのか、中古で行くのかなどで、初期費用が変わってくる。
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水上「ワクワクする話だ。しかし、事業化するには、船をつくるのか、つくらないのか、どうパネルを載せるのか、など、具体的な内容を詰めることが大事。何万円、という細かさまで詰めなくていいので、何百万円、というくらい大ざっぱには予算規模を決めることが必要。プランを具体化することで、仲間を集めやすくなる。手堅い話をしっかりするからこそ、夢のある話が実現する。まずは、琵琶湖にあるいろいろな船を、いったんすべて並べてみて、その中で、どれに載せるのがよいのかを、チェックしてみていただきたい。船をつくるのかつくらないのかも考えていただきたい」

「地域で進めるエネルギー自給への道(高島市内)」
市民エネルギー高島・山村和夫さん
資源エネ庁の助成金も受けて、小型水力発電のための流量調査を行った。当初の予想を上回る199kW、売電収入5700万円との結果が出た。一方で、建設費用が3億7000万円の見通しで、その建設費用をどう賄うかが課題。市民の出資は、集まっても3%程度ではないかと思われる。また、売電収入を農山村の老齢化対策に充てたいと考えているが、具体的にまだ決まっていない。現在、地域説明会を実施して、地域の皆さんと対話を進めているところ。
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水上「事業のリスクには大きく分けると”事業を継続できなくなるリスク”と”発電量が当初計画より減るリスク”の二つがある。このうち、後者は、配当を減らすなどの調整で可能だが、前者のリスクは致命的。そのリスクをとことんつぶすことが大事。特に小型水力発電は、地震や水害などによる前者のリスクが大きい。土木技術の高さがポイントになるので、先行地を視察し、よく学んでいただきたい。また、どうしてもリスクをつぶし切れないところは保険を使うことになるので、保険会社に早めに相談をしたほうがいい。また、収益の一部を引当金として積み立てていくことも大切。どの程度の金額まで経費としてみなせるのかは税務当局との交渉次第なので、税務当局にも早めに相談をされるのがいい。今日のグループワークでは、収益をどのように使っていくのか、ということについて議論をしていただきたい。その点で大義名分が立てば、公的支援も受けやすくなる。グリーンファイナンス推進機構などの活用も視野に入れて。」

「姉川流域EVバレー構想(米原市内)」
伊吹山スロービレッジ・嶋野美知子さん
小規模で、自分たちで管理できるような身の丈にあった小型小水力事業をやりたい。新しい産業を興したい。農業や林業も化石燃料に頼らないものにしていきたい。地域の人に、自分でエネルギーがつくれると気づいてもらうきっかけづくりができれば、と思っている。
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水上「どの程度の規模でやろうとするのか。FITにのせるのかなど、考えていただきたい。そして収益はどの程度になるのかを試算していただきたい。投資家にとって魅力的な収益(IRRで8%くらい)ではないが、ある人たちにとっては納得のできる収益なのか。それとも、純赤なのか?純赤では事業は継続できない。どうすれば持続できる収益になるのか、考えていただきたい」

こうして各チームからの発表と水上先生からのアドバイスが出揃ったところで、1時間弱のグループワークに移りました。事業の具体化に向けて、熱心な議論が繰り広げられました。その後改めて、各チームから議論の進み具合について報告してもらい、水上先生からコメントをいただきました。

「市民農園でソーラーシェアリングによる市民共同発電所(宝塚市内)」
規模は、15平方メートル×80区画、8000円/区画。借地料は売電収入でまかなって、無料化しようかと考えている。
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水上「無料化は、それこそ、公平性という点で問題がありそう。お金ではなく野菜で返す”負担付贈与”という形を取ることで金融商品取引法の対象ではなくする方法もあるし、大学の実証実験として位置づけ、大学から資金を調達する方法もある。いろいろなやり方をフラットに並べて、検討をしていただきたい。」

「地域の人の思いを生かして自治体を動かそう」
まちづくりNPOなど、直接環境をテーマにしていないNPOなどと連携し、出資者になり得る高齢者を対象として座談会を開いたり、見学会を開いたりすることを考えた。子供向けに、太陽光発電のクラフト体験をするなどもしていきたい。体制までは議論しきれなかった。
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水上「A4のパンフレットを作ってみる、というイメージで事業を詰めてみることをお奨めする。それを持って自治体にプレゼンに行くイメージで。どうすれば自治体がぜひ”やってほしい”と言ってもらえるようにできるか、考えてみてほしい。」

「青山小学校屋根貸しプロジェクト(大津市内)」
公平性の問題が課題。どうやって、学校の屋根を借りられるようにできるか。また、事業形態をどうするかが、引き続き課題。
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水上「まず、学校や教育委員会があまり協力的でないならば、その人たちとの関係を改善しようとするより、やりたい人と仲良くする、ということを考えるのが良いと思う。たとえば再エネ推進担当課など。また、”将を射んと欲すれば先ず馬を射よ”ということわざがあるように、学校を動かしたければ誰に働きかければいいか考えることが大事。たとえば子どもたち。あるいは親や先生。事業形態は、比較検討したうえで選べば、どれを選んでもよい。大切なことは、比較検討して選ぶ、というプロセスを経ること」

「びわこソーラーシップ発電」
船の種類の中では、やはり屋形船がよいという結論に至った。建造するのは費用がかかるので、中古船を活用する。また、屋形船の屋根では発電量があまり多くないので、むしろ港に太陽光発電設備を設置し、屋形船をEV船に改造して、港で発電した電気で動く、という形がいいのではないかとも考えている。
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水上「次回はより具体化し、まずはここにいる人に”1万円出資して”と提案してみてほしい。半分の人が、”よし、出資する”といってくれたら、きっと事業は成立する」

「地域で進めるエネルギー自給への道(高島市内)」
収益の生かし方としては、若者の定住のための取り組みを考えた。休耕地を借りて若者が住めるようにする、など。
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水上「具体的になってきた。先ほど、土木技術の面で先進事例から学ぶことを提案したが、その際に、収益の生かし方も学んでこられるとよい。小型水力発電を計画されているところは、ほとんどが過疎地域。”どうしたら人がいなくならないようにできるか”という課題を抱えている。たとえば飯田市では、保育園の維持に収益を充てている。そのことで、小学校が維持できるようになり、村がすたれなくなる、というストーリー。こうした事例に学び、”集落の生き残り”をテーマに、収益をどう生かすかを考えてみていただきたい。できれば目玉が”3つ”あるとよい」

「姉川流域EVバレー構想(米原市内)」
やはり、投資家の理論よりエネルギーを使う人の理論を重視したい、ということになった。50kWを一つより、20kWを二つ、という風に。しかし、小さくなると発電単価は上がってしまう。そこが課題。
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水上「投資家の理論よりエネルギーを使う人の理論を、というコンセプトは良いと思う。しかし、現実には、コストの壁がある。”純赤”になってしまっては事業自体が継続できなくなる。理想と現実の間で、”どこまでなら突っ張れるのか”ということを、具体的な試算をして、詰めていただきたい」

最後に、水上先生からの総評として、下記のようにメッセージをいただきました。

「後半のグループワークで具体的になってきて、よかった。でも、事業プランの発表に堪えうるかというと、まだだと感じる。発表に堪えるプランにするためのポイントは”愚痴らない”こと。グループワークでは、愚痴を言っている時間が長いと感じた。今の制度上の課題はいろいろとある。しかし、制度がよくないからできない、ということではいけない。「制度が変わったらここまでやれる」ということを見据えながら、今の制度の中でやれることを考え、前に進むことが大事。事業が実現するかどうかは、最終的には、人の心が動くかどうか。人の心が動く事業プランに仕上げていただきたい。」

そして講座終了前に、最終回の発表に向けた資源エネ庁の村上課長からのビデオメッセージが上映され、事業プランを仕上げていく上でのポイントを学びました。

さて次回はいよいよ最終回。2月27日(木)ピアザ淡海で、各チームから事業プランが発表されます。残されたあと1ヶ月、各チームのみなさんの健闘を祈ります!