東京第3回、最終発表会に向けて7グループが議論
- 2014.01.16
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1月14日、東京スクールの第3回講座が開催されました。
今回の講座では、ゲストに、水上貴央弁護士をお迎えして「リスクを踏まえて始めてみよう」と題して、皆さんの事業計画をシビアに検証していきました。
最初に、それぞれのチームでどんなことを話し合って来たかを、報告いただきました。皆さん、前回の講座からこれまでの間に、メンバー同士で会ったり、メールなどで連絡をとりあいながら、事業計画作りを進めてきた様子です。この講座の直前まで事前打合せをされていたチームもあったようでした。
東京スクールは、現在は7つのチームが活動しています。
最初に水上先生から「今回の目的は、自分たちの目指すものを明確にし、これなら出来そうだと思うレベルまで到達すること」ということで、今回までの「宿題」として水上先生が皆さんに出されたそれぞれのお題について、以下のような説明がありました。
1)どのような事業をやりたいのか?何を目指すのか?
自分たちで発電事業を行うことを考えているか、あるいはそれを支える人となるのか、世の中全体を盛り上げるのか。
2) 事業を通じて自分たちが提供する価値とは何か?
事業を開発する価値か。あるいは、例えば他者と連携するコーディネート力が価値なのか。
3) この事業を自分たちが行う必然性は?
自分たちの強みや独自性は何か。投資を得るためには、これを示していくことが必要。
今回の講座ではこういった視点に沿って、事業計画に磨きをかけていきます。
グループワークに入る前に、この段階での各チームの進捗について発表。水上先生がコメントし、グループワークで議論してもらいたい視点を各グループに提供しました。
「まちエネグランプリ実行委員会」
再エネの流れを後押しすることが目的。日本中に地域に貢献する発電事業者を増やすために、再エネに関心があるが何をすればいいか分からない人、再エネにはまだ関心がない人たちに、先進的な取り組みをグランプリ方式で知らせていくことで、楽しく関心を持ってもらいたい。自分たちの世代で、地域から発電事業を起こせるという道筋を建てたいという必然性を感じている。次回のまちエネ大学で、事業計画発表の様子を撮影、HPなどに載せて、どの発表が良かったかを投票してもらいたい。これをまちエネ各地で行い、全国のグランプリを決めたいと思っている。
水上「まちエネ大学自体をパイロットケースにしようという視点が面白い。大雑把で良いので、必要なことを書き並べて、事業計画化し、予算見込みを見ながら、スタート時の適切な規模、必要事項などを明確にしていくといい」
「地域分散型エネルギーを考える会」
多摩ニュータウンで再エネを東京でインパクトある形で広げたいが難しい。学校などの大きな屋根があっても20-30カ所集めても1メガ程度。老朽インフラの改修などを組み合わせて行うことで、官民連携事業といった形で展開する可能性が見えてくる。老朽化した下水道の汚水を利用した発電や、災害対策との組み合わせを考えたい。自らが発電事業をするのではなく、まちの魅力を生み出す再エネプロジェクトを作っていきたい。
水上「具体性のあるプランに決め込むとよいと思う。時間的な目標も含めて是非具体的に詰めていってほしい」
「里山の未来」
里山の資源を活かした分散型オフグリットの日本住宅を造りたい。中山間地にある空き屋の古民家をオフグリットに改装することによるまちおこし。先ずは太陽光のオフグリットセットを売り出している団体から150万円で5年間のメンテつきで提供を受けることが可能。ワークショップにして、展示することを条件に安く借りられないか交渉中。また、浜松市内の企業のリフォーム部門の人に話したら、興味を示してくれた。見本住宅を見せることからリフォームにつなげる可能性がないかと考えている。「地球環境に優しい」という切り口から天ぷら油の燃料を使った再エネ活用なども行いたい。これらが発展し、中山間地に人が来るようになればと思う。
水上「いろいろな人と会ったということが興味深いと感じた。そうすることで得られるヒントやアイデアがある。リフォーム会社や家電メーカーが事業として手がけることに関心があるのではないかと思えるので、そのテストケースという提案をすることで一種のWin-Winの関係がつくれたらよい。他にも連携の可能性がないか、さらに棚卸して欲しい。自分たちがプランに関与することで連携先にどのような価値を提供できるかを示していくことが必要」
「まち×エネ シフト」
比較的裕福な層の人たちが暮らすと言われている世田谷区。知識や経験が豊富な人、金銭的にゆとりのある人、専業主婦のように関心のありながら時間もある方もいるが、自然資源があまりない。小さいながらも太陽光を中心とした発電事業を行い、それを省エネ基金ということにしてまちで事業を行うためのベースに。メンバーには特典として情報提供などを見込む。寄付は額の設定に幅を設けられる。幅広い人たちが支援できるように。リフォーム事業者らと連携したりなど、考えていきたい。
水上「発電事業型モデルは今、岐路を迎えている。事業者型モデルで事業を拡大生産するにはどうすればよいのかがポイント。合わせて(発電)規模についても検討を」
「納得度ナンバーワオン」
再エネの普及啓発事業。対象は一般市民。電気、エネルギー、環境の知識の見える化をし、価値をどう広めるか。
水上「誰が得と感じるかがポイント。工夫した普及啓発事業には一定の投資がいる。それを具体化すると面白い」
「チームBEE」
次の世代に安心して引き継げる社会。事業化の支援。経営上不足している資源への対応、実施面について。メンバーの須藤さんは、中野で市民発電を考えている。自分はいろいろな土地を回って支援できる。設置もまだまだできるのではないかと思っている。実績もあり手がけていけると思う。
水上「『支援』の提供を目指すチーム。コンサル会社なども多くあるけれども、自分たちがやるポイントはなにか。コンサルタント会社との差別化ポイントの検討を」
「チーム半農半電」
農業と再エネの共生により持続可能な社会をつくる。そのモデルとなるモデルパイロットプラントを都会に使いたい。そのためにソーラー・シェアリング方式を広めたい。これまで千葉、南相馬で実施して来た。都会での実施を目指したいが、まだ認知度が低い。今は大学や農業高校、地域のトランジション活動をしている方々の活動場所など。中央線から見えるような場所にできたら理想。多様性のあるメンバーを活かして実施したい。2月24日の発表では、農地にパネルをつけたらすごいと是非認識いただきたい。
水上「おおざっぱでよいので、お金の出入りのイメージを固める段階に入って欲しい。規制上に不明な点など(例:設備認定など)があれば、エネ庁の方にも是非相談を」
ここから、水上先生のアドバイスを受けて1時間ほどグループごとで事業についてさらに検討を進めました。その後、改めてチームごとに1)どこまで話せたか2)積み残した課題3)水上先生にこれだけは聞きたい!——という点について発表していただきました。
「チーム半農半電」
具体的なソーラ・シェアリングのモデルが広がるきっかけづくりについて、具体的に進めてくれる相手先を探していこうと思う。12キロワット290万円のキットを100カ所でもモニター出来ないか、など。場所探しと課題の明確化を行っていこうと思う。
これまでモデルプラントを置くことを目的としていたが、ノウハウや情報を共有しながら提供するという事業形態もあるのではというアイデアも出た。また、マイパネルとしてパネルごとのオーナー制度をつくってパネルに名前を出し、発電状況とその下での農作物の生育を見ていただけるようなことなど考えられたら。いちごと電気、など。
事業者になるか、コンサルか、普及啓発か。主軸がどこかが必要。
水上「マイパネルという発想は面白い。太陽光パネルの分譲という話はあるが、下で育てる作物と一緒に権利売りするというのもあるかもしれない。パイロットが必要か、事業化の段階なのかの整理がいるのではないかと思う。下で作物がつくれることが確証されているか、というのも見極めポイントかも。パイロットであったとしてもビジネスとして成立するモデルがあるなら事業者と組むとよい。次回までに整理してほしい」
「再エネグランプリ」
現時点で収入見込みはゼロ。実際にまちエネの撮影をしてくるということで交通費等の支出と、東京での上位3グループの最終プレゼンを考えた。その出張旅費。協賛を得られるよう詳細を詰めたいと。ビジネスとして継続するための案が必要となる。法的に留意する必要があることはあるか?
水上「イベント開催だけなら問題ないが、発電事業者の方から質問を受けた際にどう対応するかというような点が検討事項となるだろう。拡大見込みがたてば成立するかもしれないが、ポイントをどこにおくか。応募者が増えること、事業化が成立すること、イベントとして成立する面白さか。ドライブファクターを見極め、規模を考えることが必要。プレゼンを期待しています」
「里山の未来」
モデル事業にするために企業とコラボという案がでたが、企業側にメリットをどう示すかが課題。日本住宅をつくるにあたり助成金などで資金を得る方向性を検討しようと思っている。太陽光の他、小水力や風力は現地調査なども必要であり、投資に見合うか見極めがいると思っている。
水上「オフグリット化という面白いテーマを掲げている。企業がどういうお金の出し方をするか。広告宣伝費か、事業費か。例えばいろいろな企業が一同に介している里山のようなところでやると(住宅展示場のようなイメージ)、広告宣伝費ということもあるかも。補助金でやるというのは、それがなければできないということでもあり危険。出なくてもできるようなしくみを考えることが必要。例えば、ホテル機能を足せないか。いろいろな里山にサンプルオフグリット住宅を体験できるコテージがあり、体験農業できる農地があり、一週間暮らしてみるような。そうなるとホテルのリゾート開発の会社と組む可能性も。企業の合理性の視点からブレストしてアイデアを絞り出して欲しい」
「地域分散型エネルギーを考える会」
FITの価格が下がってもできる方法がないか検討。パネルを安く仕入れる方法などを模索。現在10-12年での回収プランを考えているが、もう少し長期化でもよいのではと検討中。
水上「5-10年後の下水道熱よりも、直近のFITの活用を諦めていいかということを問わせていただいた。価格が下がっても成立するためにどうしたらいいかという課題の洗い出しを。マーケティングパワーが今圧倒的にないこと、そして再エネ事業者がないということがボトルネック。それを逆転するポイントを検討していただけたらと思う」
「チームまち×エネ」
世田谷ベースでの強みは、ゆとりのある暮らしをしている人、知識や興味を多様に持つ住民が多いこと。弱みは、10キロワット教会の屋根で実施した次の実施先を見つけること。そういった場を持っているところ、地方とつながる可能性が考えられる。そんなネットワークハブ的な役割を果たせるとよいのではと考えた。これをビジネス化できるかが課題。実際に世田谷の人たちがこのプランにどう乗れるか、他の地域が世田谷の強みを受け入れるか。
水上「世田谷+地方という議論を進めた点は面白い。世田谷、そして地方それぞれの人たちにとってのメリットが双方にとって明確になることが必要」
「納得度ナンバーワオン」
何を際立たせるか、どこと組むか。温暖化対策系の団体が、エネルギーの室の話が詰められていないが資金を持っていたりする。アプローチ先としてよいかも。地方と組むルーティングなど。価値を地域に再分配することを検討できないか。価値観のネットワークにこだわるとよいのかもと考えている。
水上「どこと融合することで新しい価値をひねり出すか。今同じテーブルにいる世田谷の方々との事業の親和性もある。融合的な価値の出し方を検討いただければ」
「チームBEE」
必然性。コンサルタントは短期的価値の出し方しかしないが、自分たちは長期的価値の出し方をする。
強みは、パネルの出来る人間、事業の実績も持っている。機材の選び方で2割くらい発電量が変わるというようなこともこれまでの経験から提言できると。
水上先生「どのように持続可能な方法で展開するか。ライフタイムバリューを考える。キーワードは「長期」。時間の掛け方が普通のコンサルト違うことがこの事業の価値と考えた場合に、その上での価値について深めて下さい」
発表を受けて、水上先生からは最後に以下2点についてアドバイスがありました。
「ひとつはビジネスとして考え、それぞれのプレーヤーが何を望んでいるかを考えてみるということ。一番のポイントはWin-Winであること。彼らが何を望んでいるか。それを整理出来れば具体的アイデアが湧いてくるだろう。」
「先ほど里山のチームでは「移住」というのが難しいかもしれないが「短期ステイ」ならばという発想からホテルと提案した。一般的に環境には関心が高まっているが、観光業は少し下降線気味。環境的視点を打ち出したプランなら旅行業者が興味をもつのではない。ハウスメーカーの連携で広告ということはどうか。
もう一つは、「本当にできるか?」と疑いが生じても、出来ると思ってもう一歩具体的に考えること。
一生懸命考えるとこういったブレストは1時間くらいで行える。試行錯誤の回数を増やすことが非常に重要。考えることにお金はかからない。試行錯誤は本気ですると1時間でできる。3時間あれば3回できる。そうするといいアイデアがでてくる。考えていることと悩んでいることは違う。具体的な課題を洗い出し、それぞれの人のニーズや自分たちの価値などを整理しながら具体的に意思決定すること。次回までに是非その試行錯誤を最低3回(できれば一日一回)は実施して欲しい」
水上先生からの「皆さんに是非事業化を実現して欲しい」との熱いエールの後に、経産省の村上課長からもコメントがありました。
「話がどんどん面白くなっているのがよかったが、多くの計画に具体性がないことが残念。場所と、シンボルになるような人(キャラクター)、そしてエネルギーの種類。その3つが具体的になるような事例をぜひ考えて欲しい」
「(いちごとソーラー・シェアリング、オフグリッドとホテルなど)事例を考える上でのヒントは、エネルギー以外にあることが多い。身近にあり、エネルギーと関係ない触媒となるテーマを見つけるとよい。また、表に出すことに自信が持てるテーマがいい。積極的に人に会って可能性を探って欲しい。その過程で当初の考えからはずれることもあるかもしれないが、プランの変更には柔軟であってほしい」
「最後に、具体化していく上での注意点を。成功する事業家は、アンコントローラブル(自分の力で制御不能)なものに近づかないこと。
例えば補助金、行政や政治家の裁量が働きやすい。広い意味での自分のプロジェクトの値づけにはこだわって欲しい。値段は生産者が自分で決める。それで売れるかどうかは市場が診断するもの。どれくらいの規模のものを考えているか、ファンドならトータルでどのくらいか、発電量や資金調達の規模感は。またタームはどうかなど」
次回はいよいよ最終発表会(2月24日)です。この先1ヶ月あまりの間に事業計画がどう進化するか、とても楽しみです。