長野スクール、6グループの真剣議論に中島社長がアドバイス
- 2014.12.26
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前々日から長野県内はこの時期としては異例ともいえる大雪!除雪がようやく終わり、交通機関が動き出した12月19日、まちエネ大学長野スクール第2回講座を長野市にある八十二銀行別館AV研修室にて開催しました。「おととい、昨日でなくて良かったね」「まちエネはラッキーだね」と言いながらの、スタートとなりました。
この日のゲスト講師は、岡山県真庭市から来られた、銘建工業株式会社の中島浩一郎社長。事業者として地域課題に長年取り組んでこられた方です。事業をはじめたきっかけや、経過について、また現在の様子とこれからの計画についてもお話いただきました。
バイオマス発電事業はバックギアのない車と一緒でね、地域のエンジンみたいなもの。『一本の木を元から末まで使い切る!』。会社から1日150トン出るおがくず、産業廃棄物としてお金を払って処理するか、発電するか、そこから始めたわけですよ。当時、お金がないから借りに回る時には「おかしいんじゃない?」とまで言われたが、今になっては「投資して良かったでしょ!」と言える。
ヨーロッパは木の文化、木造の建物でも高層化が進んでいる。日本は昔、地域にある森林とともに暮らしていたが、化石燃料が入ってきてから森に手を入れなくなり、森を荒らして、木の使い方が下手になってしまった。ヨーロッパとは差がついてしまい、エネルギーや木材を輸入して、どんどんお金を外国へ出している。今一度、地域にあるものを活かしてエネルギーも木材も仕事も、地域で循環させていかないともったいない。
銘建の発電機は地域の人に使ってもらっている、地域の方からチップや木を買い取ることで、大変喜ばれている。木材は非常にかさばるし、生木は水をたくさん持っているので、ちゃんと乾かして燃やさないと燃焼カロリーが減ってしまう。『さきいかくん』という生木をプレス加工するものを使っている。いかに乾かすかがポイント。
来春から始める、新しい真庭バイオマス発電事業、スタートダッシュをしたい。地域を巻き込みながら。製材事業と発電のマッチングなど、新しい展開をしていきたい。今のところ直接雇用は15人、継続して林地から材を出すとなると150人が必要となる。以前から続けている『真庭塾』では「目の前にあるものを活かそう」「地域のいろんな人や組織をつなげていこう」「足りない場合は外と連携していこう」と話している。山の森林所有者に直接支払うこともしていきたい。インフラを整備して、おがくずがきちんと使える社会にしないといけない。発電事業が地域のエンジンとなるよう、回していきたい。
中島社長には、質問にもしっかりとお答えいただきました。
Q.「外国に行かれたそうですが、どうだったのか?」
オーストリアに1週間行ってきて、いろんなものを見せてもらった。木を活かして1日2日で130リューベを山から出していた。どんどん増えていて、しかも民間ベースでやっていることに驚いた。
Q.「21世紀真庭塾を踏まえて、地域の巻き込み方のポイントがあれば」
大半は大学に行って一度は地域を離れた人たちで、いわゆる『ストロー現象』に象徴される危機感、共通の問題意識を持った15人ぐらいで始めた勉強会。いろんな分野の方を呼んできて3時間ぐらいの勉強会と、夜中まで懇親会を続けた。1年だけの限定で始めたのだが、地域間のネットワークや外とのネットワークができたのが大きい。途中から行政からも来て応援していただいている。
Q.「バイオマス発電所3つの出力の決め方、発電で出る熱の利用は?」
規模については、地域内で製材所の調査をかなりやったが、運搬を考えると50キロ圏域ぐらいで考え、複数あったほうが良い。木の水分量を減らすために『さきいかくん』を使う。ローラーを通してつぶし、水を出すが、ローラーから出たとたんに再び水を含んでしまう。そこでローラーにいろんな刃物を仕込んで、木の表面積を増やす工夫をした。発電で出た熱は、木材を乾燥させるのに使っている。
休憩の後、いよいよグループワークで事業のブラッシュアップを行いました。「事業プランニングシート」と「SWOT分析シート」を記入しながら話し合います。シート記入の例として出された『善光寺再エネイルミネーション』プランが素晴らしい!エネルギーありきではなく、何かとコラボさせた事業アイディアのほうが、実現可能で楽しくワクワクする良い事例です。
グループワークには、特別講師の中島さんをはじめ、ファシリテーターの竹垣さん、八十二銀行の方々も随時参加しながら、実現可能な事業へ作り込みを行います。メンバーそれぞれの想いを出し合う中で、また新たなアイディアが出たり、さらに全国の情報を得たり、アドバイスをいただいたり…まとめ上げるのが大変? かと思いきや、会場の温度が5℃ぐらい上がったのではないかと思えるほど、空気感というか雰囲気が盛り上がりが見られました。
「事業プランニングシート」と「SWOT分析シート」について、それぞれ発表していただきました。
①『りんごの薪をお街の人に売る商売』青木信治さん』
りんご栽培・果樹農家は高齢化で辟易している。田舎から、お街の人に薪とか美味しい自然素材を買ってもらって、田舎の魅力を感じてもらえれば良い。そのために、薪ステーション、スモークチップなどを整備していく。情報発信はSNSを活用したり、口コミ、コミュニティを使って誠実にしていく。課題は農家との連携、若いチェーンソーワークが出来る人を育成したい。農業と林業のコラボレーションで良いビジネスに育てたい。
②『空家をエネ家(空の下のエをエネに)』新雄太さん
5件に1件が空家、その1件を活かして超スモールグリットを実現させる。災害時にはエネルギー拠点となり、そこがカフェだったり、田舎暮らしのお試しができるという、交流の場にしていきたい。隣組の関係性をエネルギーがつなぐ。周辺の家もシェアハウスにすることで人の気配を感じるコミュニティ。課題として、空家の所有権は?そして資金がかかる、どこから調達するか?今後空き家が増える、都会には田舎暮らしの憧れがあり、その受け皿にしたい。また、各地域で異なる事情にどれだけ対応できるか。地域の資源に寄り添ったベストミックスを提案したい。
ふたつの発表をまとめて、中島さんよりコメントをいただきました。
「りんごの木は薪になるとブランドになる。そのりんごの木がどこで生まれた、いつ植えたとか、どんなりんごを育ててきたか…など、ストーリーがあるとお客さんは喜ぶ。ストーリーがあることによって、利益率が上がるはず。
もうひとつのエネ家、残念ながらイメージわかない。これから空き家が増えることを前提に、ハードルはたくさんあるだろうけど、中身をふくらませていけば。」
③『バイナリー熱利用』酒井良兼さん
信州の美しい森を中心とした保全・整備活用。カラマツやスギが多く、森林残渣がいっぱい。降雪寒冷地がほとんど、雪室もあり、熱は重宝される。体育館や公民館などの災害避難場所の暖房、非常用電源を小型バイナリーで日常的に支える体制をつくる。FITを使えれば設備費は回収できる。環境保全への強い想いのある地域、小さくて誰でも参加できる体制を作る。課題は事業採算性。そもそも出来るのか?小型バイナリー装置の実績がないので、先進事例になってしまう。自然環境、文化環境の整備が目的なので、採算性がなく規格化されていないオーダーメイドとなる。
④『ペレット活用で地域の雇用づくり』久保田謙三さん
エネルギーの自給自足、長野で若い人が仕事できる新たな雇用づくり。販売網を使って買い物弱者、車の運転ができないお年寄りなどへ貢献できる。製材所から出てくるかんなくず、材木など未利用のものを使って、熱利用ペレットストーブを地域で普及させながら、ペレットの配達・メンテナンスなどを行う。また、ペレットそのものを作り、カフェなどに設置して情報発信していく。ペレットストーブについては長野市・千曲市で助成金が出る。配達をして家の中に入れる顔が見える商売なので、その他の御用聞きができる。LEDのおすすめなど。課題は安定した品質の保持と、ストーブのない時期の仕事。もしかすると、水素社会が成熟すると見向きもされない?
ここで再び、中島さんのコメントをいただきます。
「素人が簡単に手を出すのではなく、エネルギーのことは専門家の方にきっちり検証してもらうこと。バイナリー発電について、実績のある3台について徹底的にチェックすることから、ストーブもボイラーも、ペレットがあまりに普及していない。この地域ならではの『長野モデル』を作ることを目指そう。」
⑤『省エネコミュニティづくり』岩間正之さん
新しい10件のコミュニティを作る。マイクロ水力発電ができて、遊休農地がある適地を探す。切り捨て間伐されている森林なども、有効活用したい。課題としては、就業する場所がない、在宅で仕事をしているアーティスト系の人に呼びかける。100kw(10件分)の発電事業をする。どうやって行政の力を借りていくかも考えたい。
⑥『村の宝を掘り起こせ!ひと肌ぬがせ隊、王滝村バージョン』
倉橋孝四郎さん、高尾康太さん
村民・市民が立ち上がるきっかけ、ムーブメントを起こす第一歩。王滝村を再生可能エネルギーを導入していくモデル地域に。御嶽山噴火で打撃を受けているサービス業に元気を与えたい。ふるさと納税の見返りに薪を送る。まちエネ期間中に1ヶ所事業化する。その王滝村のモデルで県内の小さな町村を元気づける。王滝村は豊富な森林資源、ほとんどが森。中心部に家が集まっているので熱供給に有利。課題はお金がないこと、サービス業に元気がないこと。愛知用水の水源なので下流域のコミュニティや、御嶽山信仰の方々ともつながれる。お金やアイディアのリソースを提供していく。多様なメンバーでいろいろできる。
中島さんのコメント。
「100kwのバイオマス発電機は、なかなかできていない。規模や地域の見極めが必要だろう。『豊かな森林資源』と良く言うが、本当に豊かなのだろうか?聞いてみると、思考停止する人が多い。この森が本当に豊かなのかという視点が必要。森を使う仕組みがあるか?使ってこそ豊かさを活かせる。小さなことからでもはじめていくことが大切なのでは。」
まさに、ハッとする気付きをいただきました。中島さん、ありがとうございます!
次回は来年1月30日『リスクを踏まえて始めるために今、できること』。次回のゲスト講師、弁護士の水上貴央さんからのビデオメッセージを見ます。
①「できること」と「やりたいこと」を分けて考える。事業として「できる部分」を考える。仲間を集めればできることはあるけれど、自分たちはどのパートをやるのか区別をして議論。
②テクニカルな議論をする前に、自分たちの担う部分の「価値」は何か。自分たちの事業、その「価値」を一言で説明できることが大事。講座の最初に質問しますので、一言高らかに宣言できるように準備してきて下さい。A4の紙1枚ぐらいにまとめて、金融機関の人にパシッと説明できるようにお願いします。
産みの苦しみが始まる予感、でもワクワクみんなで楽しく乗り越えていきたいですね。第3回の講座が楽しみです。(了)