和歌山は「再エネで塩産業復興」「地域貢献型ソーラー発電」等、8グループが事業発表へ

  • 2014.02.07
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和歌山スクールは、今回も素敵なファシリテーターのお二人、青木さんと紀陽銀行の吉田さんの進行でスタートしました。今回のゲストは、NPO法人再エネ事業者を支援する法律実務者の会代表で弁護士の水上貴央さん。はじめに、水上先生より「リスクについて“考えよう”ではなく、リスクを踏まえて実際に前に進みましょう」とのメッセージをいただき、今回の講座で意識すべき3つのポイントが提示されました。

(1)どのような事業をやりたいのか?何を目指すのか?

(2)事業を通じて自分たちが提供する価値とは何か?

(3)この事業を自分たちが行う必然性は?

グループワークに先立ち、全8グループから現段階の状況について宿題発表を兼ねて報告してもらい、水上先生からグループワークのゴールポイントについて具体的なアドバイスをいただきました。
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【多田祐之さん キー(紀伊)ステーション】
中山間地域にある未利用木材の活用が目的。すでに動き出している薪利用のネットワークからビニールハウスボイラーへの供給の流れもできつつあり、「木の駅」という需要と供給の交差点を立ち上げるなど、今後薪ストーブの利用者を増やすための新たなしくみづくりを促進したい。
水上「まず計画全体がわかるよう、簡単な地図でポンチ絵を書いてみてほしい。そこに具体的な数値を載せてみて、どのくらいの薪の調達と売り先が可能かを考えてみる。さらに販売時の価格設定、つまり収益をどう設定するかでビジネスの規模が見えてくる」

【濱田朝康さん 石神エコヴィレッジ・プロジェクト】
石神は13世帯の小さな集落。限界集落からの脱出と活性化を図りたい。観光資源として寒梅があり、シーズンには7千人が訪れる。シーズンオフにも足を運んでもらえるしくみをつくり、同時に里山のライフスタイル提案を行い、居住者を募って地域を盛り上げられる仲間を増やしたい。まずは1万人を目標として考えている。
水上「切実な想いをもった取り組み、ぜひ実現してほしい。訪れる時期を整理して考え、寒梅以外の時期に来て欲しいのであれば、そのターゲットを絞ること。梅をきっかけにリピーターを募るのか、接点のない新たな層の呼び込みを考えるのか。この二つは全然違うアプローチなので、来客層の年齢や性別などにも注意して。また、滞在時間を長くする工夫についても検討してみてほしい」

【安原克彦さん 地域共同発電】
太陽光発電による売電の事業をスタートさせており、代表の地元串本町を中心にさらにエリアを拡充していきたい。現状、売電として得た収益を活動資金にあて活動を行っている。今回議論したい点は、さらに出資者を募るために不可欠な「信頼感」をどのようにして獲得していくかを具体化していきたい。
水上「まずは、自分たちが銀行だったら?という視点で考えてみる。そこから逆に順を追ってたどっていくと、具体的なものがみえてくる。事業主体や経営状態などのチェックポイントをきちんと押さえる。また、他の事業者との差別化についても出資者に対して、こちらを選んでもらえる強みを考えてみてほしい。その際に、短いセンテンスで取り組みが伝わるようなフレーズ(想い)がわかるような工夫を」

【野中恵治さん ゴミ利用のメタン発電】
地域で排出される違法処理廃棄物をエネルギー利用に転換したい。環境負荷の軽減と収益性のあるビジネスモデルに。検討したい案件は3つ。1つは、家庭から出る雑排水など県内の浄化整備が進んでいない現状があり、そのために水質汚染の問題がある。ここからメタン発酵によって燃料を生成する。2つ目に、紀南地方では梅の生産工場が多数あるがそこから流される排調味液が大量に出てきている、ここにメタンガス化プラントを併設しコスト削減とエネルギー生成を目指す。3つ目は新設の住宅団地に埋設される集中浄化槽にメタン発酵による燃料生成施設を併設し、各家庭にディスポーザをつけて生ごみの回収システムも構築する。しかし自分たちの取り組みとして、役割、必然性ともに直接関わっている内容ではないので、このあたりは特に詰めていない。
水上「3つのテーマともどれも大きな案件であると考えられる。まずこの中からどのテーマがやれそうかというところを絞ってみてほしい。挙げられたテーマ内のハードルとしては、家庭排水は内容物が一定しておらず、効率的な発酵システムを構築できるかどうかが難しい。メタンガス生成を始点に考えた時に、対象となる廃棄物がひとつに絞られていると前に進めやすい。個人的にはおもしろいジャンルだと思うので、ハードルの低いところを探って、絞り込んでみてほしい。

【相澤亮介さん、大西俊介さん 先人の知恵からエネルギー地産地消】
過疎化した地域だが、先人の知恵としてそこに住むひとからの話を聞き技術を学んで、それらを伝え、広げていける社会を目指したい。具体的な取り組みとしては再エネを活用した拠点をつくり、地域の魅力を発信。里山利活用のテーマで内外からの訪問者のもてなしの場としていく。また、深刻な獣害対策やアート、ジビエなどで魅力づくり。地域の子どもたち集まる場づくり、寺子屋などの子育てスペースをつくりたい。時に災害時の共同シェルターとしての機能も持たせたい。
水上「結構やりたいことのボリュームがあると感じたので、今回の議論としては限られた時間内で絞り込んで進めていただければと思う。個人的には”再エネかかし”がおもしろいと思う。これをグリップにして十分いかせる事業として考えてみては?予算や人数という資源が決められているので、効率的なピンポイントの計画を」

【石橋幸四郎さん 木質バイオマスの豊富な資源を活かして紀州の海水から塩作り】
印南町を中心とした紀南地域で森林を利用したエネルギー事業を展開したい。温泉施設利用の選択肢もあるが、利用需要にムラがありコンスタントな需要になりにくいという観点から、連続稼働で熱利用できる先として、未利用材などを熱利用し廃棄される梅酢を煮詰めて梅塩を作りたい。具体的には2億円事業として内50%の補助でいけるかどうか検討したい。
水上「今回補助金については一旦考えない方向で考えてみたい。行政サイドに左右されてしまう要素となり、事業そのものが進まなくなる可能性を含んでしまうため。塩作りということだが、コストについて積算できると思うので、具体的に出してみてほしい。また、最終的な売価について考える。これは「ブランド塩」をつくることになるので、その価値について戦略的な構想を立ててほしい」

【辻野昭二さん ワークショップを取り入れた、近野電力(近露と野中)プロジェクト】
地域のスモール発電プロジェクトとして、小水力というジャンルから、地域住民の理解を得ながら、とりあえず始めてしまう考え。ワークショップとしてソーラー発電づくりを通じて子どもたちに興味を持ってもらい、地元愛・郷土愛も同時に育みたい。生活圏としての魅力→Uターン者を増やしたい。地元住民なしでは成り立たないと感じており、うまく折り合いながら他方からの情報を投げつつ刺激を与え、気持ちと信頼を獲得したい。
水上「必然がないと言っていたが、住民の声への応えを探る必然があると思う。ただしビジネスに直接結びつけるアプローチではなく、デザインをされているのであればプロジェクトが見えるような絵を書いてみることからスタートして。より具体的なものをイメージしながらインスピレーションを掻き立てるようなものを拾ってみてほしい」

【山田和生さん 地域利用可能な充電ステーション創設】
地域における電気自動車普及の妨げとして充電ステーションの不足が挙げられる。太陽光発電を併設して、その収益から設置場所の拡充やランニングコストに転換していきたい。新たな制度が始まり、それをうまく活用したいという段階。現時点で公共施設の屋根がし事業を行政機関に交渉しかかっている。和歌山は自動車不可欠の地域なので、電気自動車普及に向けた取り組みをすすめたい。
水上「充電ステーションの創設&どう住民を取り込んでいくかという2つのテーマがある。まず、太陽光発電と充電ステーションは相性が良くないと思うので、分けて考えたほうが良いと思う。まずはステーションを事業化するための計画として、ある程度具体的な場所を想定して、どのくらいの規模かをイメージして進めてみてほしい。また事業化するにあたり、どの分野で行くのかを見定めてからのほうがより具体的な方向性になっていく。施工業者になるのか、メーカーとしてやるのか、金融会社としてやるのか。順を追って考えてみてほしい。」

そして、水上弁護士からのアドバイスを聞いた各チームがワークショップに突入しました。ここからの約60分は、さらに内容を詰めて事業計画を描くための白熱した議論が展開しました。
後半は、話し合った内容について、どこまで詰められたか、そして課題や疑問などの発表が再び各チームごとに行われました。

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【先人の知恵からエネルギー地産地消】
(かかしのイメージイラストを提示しながら)テーマの絞り込みで「かかし」について議論し、風量調査や、水量調査の目的でかかし作りを進めていったらいいのではというアイデアが出てきた。農地転用の問題などで、大々的な売電設備を構築するよりも、動きに必要な電力を調達するための設備を考える。かかしのしくみは田んぼに鳥が飛んで来ると、ロープに吊るされた“おじさんかかし”が田んぼの中央に向かって走ってくるようなしくみで鳥を追い払うしくみ。
水上「グリップが効いてきた。かかしの絵を見ると期待感がアップします。次回最終発表までの詰めとしては、この案山子いくらで売る?買う人は?どんな感じなの?使われ方は?という点、次にこのかかしのある山村ってどんな感じ?これを使って次に興せることはどんなこと?」

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【地域利用可能な充電ステーション創設】
地域にないという現実があるので、充電ステーションをとにかく作ってみよう。設備費については、自動車メーカーなどの補助金制度を活用することで大きな出資を作らずともすすめられそう。電気自動車普及による需要が安定するまでは、太陽光発電設備をつけてそこからの売電分をランニングコストに充てる。この取り組みを進められそうな他業者に任せればいいのでは?という意見も出たが、自分たちが取り組む意義として二次利用として防災時に活用できる蓄電池をつける、三次利用として電気自動車そのものが蓄電池の役割を果たすので、普及を加速させるための拠点として展開できないかというところまで話が及んだ。
水上「具体的な予算を出して、それほどかからないのであれば、じゃあかかる費用はどのくらいなのか。ランニングコストはどのくらいなのかについて次回までに詰めておいてほしいと思う。実際にかからないのであれば、太陽光発電はいらないということにもなるかもしれない。太陽光発電設備を置くためにも費用がかかってくる。つまり、充電ステーションと一緒に運用することによるシナジー効果が今の時点では見えてこない。別々に収益を上げる必要がでてくるため両方の数字を考えていかないといけなくなる。その場合、何キロワットをどういう風に設置するのかというところまで具体的なプランが出てくると、実行に結びつきやすい。もう一点として、第2次、第3次といった災害を想定しているが、突き詰めていくと第1次の需要についての必然を考えないと、出資者からのゴーサインが取りにくいと思う。次回までにそのあたり頭をひねっていただければ、より明確な発表ができるのではないかと思う」

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【地域支援型共同発電】
地域の支援先についての目処が立ち、組織としての準備もでき、あとは出資者を募る段階に来ている。今回の議論の中心として信頼度を獲得するための方法について詰めている。まず自分たちの個人紹介を行い、顔の見える化を図る。そして「応援メッセージ」を有識者はじめ、多くの方から募っており、それらをまとめて信頼獲得のツールとしたい。また、コアメンバーだけだと煮詰まるので、監査役など組織のご意見番となりうる方を仲間にしたい。
水上「すでに具体化されているので、次回までに二つの事を進めてほしい。ひとつは金融機関への申込の際の提案書を具体的に書いてみる。収益の一部を寄附に回すということだが、その先が明確になるよう信用性アピールの手順・方法など、クリアしやすいものを積み上げていく。ネット上で情報公開を行うなど。もう一つは市民ファンドとしての提案資料づくり。ズバリ何を伝えて行動してもらうか。たとえば利回りの面で有利性がある、地域商品券を配るなど、付加価値の要素を考えてみる。

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【石神エコヴィレッジ・プロジェクト】
現在3軒ある空き家に居住者を募りたい。ターゲットを絞り自給自足できる村づくりというテーマであったが、水上さんから「今ある魅力は何?」の問に「梅の経営者になれます」というキーワードが出てきた。そして、エコビレッジとして進んでいくことをアピールし、共感し一緒につくっていってもらえる人をターゲットとして募っていく方向性が生まれた。そのためのイベントとして、観光資源の梅を最大限活かし、花の咲く時期、実を収穫する時期、それを干し食べる時期と年3回程度の集客タイミングを企画したい。また、コンニャクを手作りするがその際に梅の枝を燃料利用し、バイオマス利用の実際を見てもらう。再エネについて地元の方も巻き込むために、次世代ソーラーパネルのワークショップを開催することにしている。
水上「このチームは今回の議論を通じてテーマシフトしたと思う。「観光」から「地域再生」になった。この取り組みのポイントは二つ「地域の方がどのように幸せになるか」と「Iターンなどの居住者をどう増やすのか」。これは重なることもあり違うこともあるという話になる。「居住者はどこに住みたいのか」への答えを考えることはマーケティングとして探っていくことになり、今住んでいる人の幸せを考えることとは違いがある。その二つの点が矛盾なく結びつくことを見つけることがとても重要だと思う。すでに7千人の集客があることは実は強みであるという認識をもって、そこから居住者づくりにつなげていってほしい。」

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【ゴミ利用のメタン発電】
今回新たにメンバーとなった方が梅干製造をされているということで、梅の排調味液に絞って議論した。排出について具体的な話を聞くことができ、かなり利益を圧迫しているなど、苦労されている実態が見えてきた。次回発表までに具体的なコストについて数字を上げていき、実現性について探っていきたい。
水上「絞り込まれてとても分かり易くなった。家庭用のゴミと調味液の違いとして、単一のものか混ざっているのかで効率が全然変わってくる。さらに梅以外にミカンの皮は?などいろいろおもしろい話があがった。現実問題として、廃液処理にコストのかかっている企業にはたらきかけをすれば、必然的に事業に乗ってくる。筋の良い絞り込みをされたという認識。ここからは細かな計算はなかなか立てられないと思うので、事業規模を想定し、ざっくりとした予算だてを行い、どういう計画を建てられるのかを出せるといい。その際にどこまで削減できるかというコスト計算をして、自分なりのハードル設定を明確にするとかなり前に進むと思う」

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【木質バイオマスの豊富な資源を活かして紀州の海水から塩作り】
バイオマスで塩をつくるというビジネスモデルは長崎県対馬ですで行われているので、コスト計算を重点的にやってみた。イニシャルは2億円程度かかり、120トン/年作れそうという計算。売価は500円/キロで設定し、和歌山にもビジネスとして持ち込めそう。課題として、6000万円の商品の売り先を考えたいが、どのくらいまでを想定したらよいか。また、和歌山ブランドをどうつくるか。
水上「今後金融機関からの融資の際に有利なのが、実際の事例と比較しながら話をすすめるという方法がある。『対馬と比べてうちはこうである』という説明は、分からない人にはわかりやすい話になる。良いと思う点はコスト効率。対馬が海水であるのに対して、梅酢だとすでに塩分濃度が高そうなので。梅塩だと付加価値が高そう。キロ500円という設定を立てられているがもっとブランドとしての強みを考えて野心的に、例えばキロ1000円で売る方法を考えてみると良いのでは。そのためのストーリーなど。販路は個人・企業・通販など含めて発送豊かに検討したらいいと思う」

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【ワークショップを取り入れた、近野電力(近露と野中)プロジェクト】
現在シェアハウスをつくるという企画があり、それを利用してクリーンエネハウス村という構想があがっている。体験・ボランティア・自然学校など来訪者が宿泊しながら教育できる施設。クリーンエネルギー普及のために、長期的なチームメンバーの付き合いをしていくことになった。子どもとオトナが同時に省エネについて田舎暮らしを体験しながら考えてもらう。また、農業体験や「ふるさと」と心に留めてもらえるようなイベントなどを考えたい。ジビエ焼き肉などのツアーづくり」
水上「最初はどういう方向にすすむのかと思っていたが、だんだん熱が上がってきて「まちエネ」としての取り組みというよりはチームビルディングとして確立してきたと感じた。ひとづくり教育のコンテンツについてみんなが考えるのか、他から引っ張ってくるのか。そこでまず、強力なコンテンツを1個考えて集客につなげ、そこからコンテンツを持って人が入ってくるというしくみ。それが出来るとネットワークづくりのきっかけに出来る」

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【キー(紀伊)ステーション】
議論を通じて出てきたものとして、薪の需要ネットワークを活かし、薪35,000円/トンでの販売を考える。(絵を見せながら)軽トラで運び込みされた木を1万2千円払う。「木の駅」できれば田辺市に設置し、1時間圏内の100軒に行き来してもらうことが可能。販売店に用意する薪を2パターン用意し、すでに薪として割ったものと、自分で割りたい人には玉切りしたものを用意し、それらを合わせて年200万円の粗利が出るという計算がたった。
水上「絵を書くことでリアリティが増した。こういう絵があると発表時に伝わりやすい。初期投資が少なくできるのであれば、すぐできそうという印象。薪ストーブユーザーと提供者の把握と勧誘がこの事業のポイント。ここを具体的に詰めるといけるのではないでしょうか」

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最後に、村上課長からのビデオメッセージがありました。
「みなさん、アイデアはどんどん面白い方向に言っていると思いますが、もしかして具体性にかけているのではないでしょうか?次回に向けた宿題を伝えます。ストーリーは具体的に考えてください。キーワードは3つ。「場所」「シンボルになるような人」「発電の種類」です。
「これはいける」という事例を3つ創るために、

1:触媒を上手に探す 地域を巻き込む要素ーまちブランディング(エネルギーとは違うが)エネルギー以外から拾ってみる
2:キャラクターがほしい 「あの中野のキャンパスが」というインパクト→露出に耐える
3:人の相性にあたってみる 「当たってくだけろ」人に会ってみよう

そして、これらを進める上でのコツ、ヒントについては、
・アンコントローラブルなものには近づかない→外部要素(補助金など)
・広い意味での価値・値付けにこだわる 自身できちんと説明できるように具体的に語る
・人のつながりが増えるようなプロジェクトづくり

以上の点を踏まえて、最終回のプレゼン発表に向けてまとめてきて下さいとのことでした。

まちエネ大学和歌山スクール、最終回は3月5日(水)に公認会計士の小泉先生の元で8グループの発表が行われます。
いよいよファイナルです!