和歌山スクール、地域色豊かな8つのプラン発表

  • 2014.03.15
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3月5日、和歌山スクールのファイナル、最終発表会が実施されました。
公認会計士の小泉博之さんのファシリテーションにて、NPOチルドリン法人チルドリン代表理事 蒲生美智代さん、紀陽銀行地域振興部 國中俊秀さん、経済産業省資源エネルギー庁新エネルギー対策課 佐久秀弥さん 宮崎達弥さんの4名の審査員を迎えての開催です。

全会場で最もグループが多い和歌山スクールは、8分間という限られた時間の中で、各チームから最大限の力を発揮してのプレゼンテーションが行われました。リーダー発表のあと会場からの質問タイム、シンキングタイムの後審査員の講評という流れで進行します。また他のチームからは発表チームに対して「ギフトメッセージ」が送られ、互いの取り組みを称えるコメントが集まりました。

<プレゼンテーション・タイム>
キー(紀伊)ステーション「里山の森林資源を活かし、需要と供給の拠点づくり」
(リーダー:多田祐之さん)
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<発表概要>
田辺市を中心とした、未利用間伐材に付加価値をつけて活用する拠点を構築したい。これまで地球温暖化対策の視点で活動を行ってきた。植樹の運動を始めた時に荒廃した放置林の現状を目の当たりにし「ここから始めないと」という思いで今日に至っている。薪ストーブのユーザーとつながり、森のプロである森林組合や、個人で山に入る自伐林家とのつながりもでき始めており、徐々にネットワークづくりを進めている。この取り組みには、山からの搬出・乾燥・薪割りができる場が必要で、候補地も確保。「木」と「紀」と「Key」を合言葉に、35,000円/トンで流通できるしくみを構築したい。
<会場から>
Q:薪を利用する人を80~100人に増やすという計画だがどのように考えている?
A:建築家の仲間がいて、新築時に普及提案するチャネルがあるので、そこを活用して増やしていきたい

<審査員から>
【蒲生】すでにはじめておられるとのことで、とても具体的。薪ストーブの魅力をどう伝えていけばいいかを考えてみては。梅の木=バイオマス活用をうまくストーリー化できればいいと思う。
【國中】具体的でいいと思う。薪として売るには乾燥時間が必要なため、商品提供の状況把握ができるといいのでは。実際に灯油利用が減ってきており、原因は利用者の高齢化による運搬のしに草がある。灯油代替としての採算を計算しアピールできるポイントを考えてみて。
【佐久】風力などの大規模事業だと難しいが、この取り組みであれば地域をうまく巻き込める要素がありいいと思う。需要と供給のマッチングをはかって徳島・上勝町のような住民巻き込みのしくみができると着実な展開が見込めると思う。

石神エコヴィレッジ・プロジェクト (リーダー:濱田朝康さん)
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<発表概要>
13世帯の限界集落にあり、過疎・高齢化による村の衰退をとめるため住民を増やすことを目指している。梅林という観光資源を地域発信し、多くの動員を図りたい。今週オーガニックフェスティバルのイベントを企画しており、里山の魅力を最大限にアピールする予定がある。加えて「わたしたち電力」も開催し、エネルギーの自給自足についてのPRも展開。簡易型オフグリッドハウスの開発も検討している。折りたたんで軽トラックに積載できるしくみで、広げるとソーラーパネルのついた6畳ほどのミニログハウスといったイメージ。これを有償で貸出し、電気の引きにくい田畑、ウォーキングイベントの休憩所などに活用してもらう。里山と人を結び地域のキーワードとして再エネの認識を共有し活用できる場にしていきたい。
<審査員から>
【蒲生】観光協会との接点があり、そこで聞かれる最近のキーワードは「馴染みのあるところに帰れる場所」を求める傾向。石神はそんな雰囲気を持っている。泊まりやショートステイできるような観光の入口をつくり、受け入れのしくみをつくってみては。間伐材利用で盛んな岡山県との関係性を感じた。オフグリッドハウスが、再エネをブランディング出来る要素として活用できることを期待。
【國中】地域への熱い想いを感じた。観光+オフグリッドハウスという点がいいと思う。レンタルしてもらいやすい要素として、折りたたみ時のコンパクト化などを考えると需要が拡大すると思う。
【佐久】エネルギー受給、ライフスタイル、観光の3つが並走しており、いずれも充実させたいのであれば、それぞれの住み分けを行って考えてみては。すべてを「まちエネ」に盛り込まないで、広い視点で進められたらいいと思う。

「地域支援型共同発電」 (リーダー:安原克彦さん)
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<発表概要>
地域の高齢化に伴い、地域の税収などの税源が乏しくなってくることが予測され、子育て支援や高齢者支援などを活動主体とするNPO団体への助成資金の枯渇が考えられる。そこで、地域に根ざした発電所をつくることで、そこで得た収益を公益活動団体へ充てることを目指している。今年度は、子育て・青少年支援団体、海洋保全団体への2つの支援計画を立てている。総額2,000万円規模となる見込み。資金調達は50%を地域から募り、残りは金融機関からの融資を期待している。実行に向け、一人でも多くの出資を募っていきたい。
<審査員から>
【蒲生】「地域資源を子育て支援に」という発想がいい着眼点だと感じた。金融機関からの融資は少し置いて、他の出資を募る方法に重心を傾けては。今後の地域価値として運営していく点で、商店や地元住民が集まりやすい場所でプレゼンテーションを実施されたらいいと思う。
【國中】FITを利用し地域還元できる発想が非常にいい。議事私募債などを活用したいとのことだが、DIYによる設置や基礎の方式など、耐久性・耐候性についてクリアできる材料が求められる。出資者に対してのリスク対応など信頼性を担保できるよう、メンテナンスなどの試算も配慮されればと思う。
【佐久】FITを活用=20年間という長期展開に対しての信用性が大事だと思う。今回まちエネという視点でのプレゼンと言うこともあったと思うが、連携する地域NPOの活動内容をクローズアップすることで、その団体のファンづくりから出資に繋げられるのではと感じた。子育てや高齢者グループの活動内容や、海洋保全団体がわかるとその先が見えやすい。

「梅ぼし加工業者の調味廃液からメタン発酵による発電事業」(リーダー:野中恵治さん)
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<発表概要>
実際に稼働している業者をモデルに事業計画を策定。効率性のある排水処理施設の構築を考えた。その結果、海外ではすでに普及し始めているしくみを採用し、浄化槽を1段階から2段階とする。「嫌気性」「好気性」という2つの異なるバクテリアのいる浄化槽を準備し、大量に出てくる廃液を効率よく処理。その際に発生するメタンガスを燃焼させ、タービンを回して電気をつくるシステムとした。多くの加工業者が頭を悩ませているこの問題に対して、廃液処理と発電という相乗効果の期待できるものとして、トータルプロデュースできる事業にしていきたい。
<審査員から>
【蒲生】専門的な内容だったため分かりにくいところも多かった。発電量は事業全体からするとそれほど大きくないとのことなので、再エネ連動での予算付けは少なく見積もる必要がありそう。
今回のケースでは工場関係者は親類縁者がほとんどとの事なので、そこを意識して確実に実施できる手段を考えられてみては。
【國中】この浄化システム方式はあまり採用されていないようだが、仕事柄、過去に梅加工業者との接点機会で、同様の問題を耳にしていた。ぜひ和歌山の活性化のためにも進めていってほしい。
【宮崎】FITでの売電対象となるのであれば、それにむけて取り組んでほしいし、自家消費にとどまるのならどういった活用ができるかを含めて多角的に検討してみては。

「かかしから始まる地域活性」(リーダー:相澤亮介さん)
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<発表概要>
里山の活性化を図るために、地域の元気をつくる計画。現在、地域の行政関係の担当者を巻き込み動き出している。「かかし」というコンセプトはグリップを効かせることにつながっている。提供側と利用側という視点で見た場合、双方が歩み寄る軸になりうると考えた。提供側は、地域コミュニケーションを促し、住人の多数を占める農業従事者との関係構築が図れる。利用側には、鳥獣害対策としてのメリットを入口として、見た目の楽しさなどで引きこんでいける。胴体部に風車を備えたベースキットを用意し、販売。バリエーション展開としては、からくり機能、風の調査機能、地域の物語を語る機能、会話機能や、発行、充電など。ニーズとアイデアでさまざまな機能を搭載できる。また、子ども向けにかかしづくりのワークショップや、大人向けの電気の基礎講座などイベント展開も想定。かかしとコミュニティの充実とともに地域全体がおもてなしできる場として発展させたい。
<会場から>
Q:からくりかかしの発電に必要な風量はどのくらい?
A:まだ実機を制作しておらず、数値はないがキッチンの換気扇程度というのを想定している。
Q:メンバー数は?
A:まだ二人だけなので(今回参加者も)ぜひ仲間になってほしい。

<審査員から>
【蒲生】
事業スキームとしてのコメントは少々むずかしい。私たちの団体も「楽しい・おもしろい」からスタートしており、そういった点からのスタートがないと機運が高まらないのでそこからスタートしては。想定しているかかしの大きさは150cmくらいとのことだが、サイズ違いなどバリエーションがあると、他での利用拡大に繋がりそう。サイズダウン=低価格で、手が出しやすくなる。
【國中】
かかしは売っている?(答え:光るかかしなど販売・家庭菜園利用者など収穫前に購入)それを聞き思い出したのが、伊吹山スキー場でオフシーズンの集客で光るテントというものをやっていた。似たような発想で「光るかかし」で関心層を呼びこむしくみを考えてみては。
【佐久】普段の生活だと「かかし」を意識する機会は少ない。実際に作れるのかという点と、売れるのかという点が気になった。売り先とニーズを研究してみてほしい。

木質バイオマスの豊富な資源を活かして紀州の海水から塩作り(リーダー:藏光俊輔さん)
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<発表概要>
コンセプトは燃料から原料まですべて「紀州産」としブランド化を図りたい。バイオマス利用の塩作りは、すでに長崎県で実績のある事業。これを和歌山に持ち込んで、和歌山らしさを全面的に押し出していく。燃料は地元の間伐材。海水も地元産、梅ぼし加工の過程で出る梅酢も地元産という一貫したものとする。バイオソルトは食品加工や飲食店へ提供し、付加価値を上げる。梅塩は、小売を中心に展開していくことを想定。新たな価値づくりを検討している。600円/キロは競合する製品比較でも十分対抗できる設定。建設予定地も絞り込んでいるため、早期実現に向けて進めていきたい。
<会場から>
Q:塩の精製で蒸気ボイラー活用というが、薪の直熱ではだめなのか
A:今回は大規模な設備設計でコストダウンを想定しておりこの方式にした
Q:(料理人のメンバーに)利用側の視点としてはどうか
A:梅塩の売り先として、一般消費と和歌山は干物作りが盛んなのでそのあたりに働きかけを考えたい。海塩は料亭など飲食関係者のニーズを引き出せると考えている。
<審査員から>
【蒲生】予算面などとても具体的。手を上げてくれる出資者も多いように感じた。最近、ドライスープの素を使って新たなレシピづくりが流行っている。特に「梅塩」という調味料は新鮮な響きがあり、料理の幅を広げられる期待感から、首都圏ニーズが大きいように思う。
【國中】チップの調達先は具体的に確保しているとのこと。コスト面について後ほど再度説明を聞きたい。梅塩のブランドづくりとして、クックパッドなどネットでの提案をすると効果があると思う。また、ニーズリサーチを行って規模の調査も。万一梅塩が難しくても海水一本化などの切り替え計画などもされたら良いと思う。
【宮崎】木質バイオマス利用が単なるイメージ戦略のように聞こえたが、長時間稼働向きの燃料という灯油代替としての位置づけを行っているようなので、実質的な利用価値を生み出せると思う。沖縄の「雪塩」などのような地域ブランドとして確立できるものにされたらいいと思う。

ワークショップを取り入れた、近野電力(近露と野中)プロジェクト (リーダー:辻野昭二さん)
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<発表概要>
「2024年、ここは『ちかの[近露+野中]』です。ITなどの仕事をしながら里山に暮らす若者が増え、地元住民と協力しあっています。住民代表が「一緒にやってきて良かった!」と嬉しそうに語るのが印象的です」と、未来の里山のイメージを想像できるメッセージからプレゼンがスタート。お金を使うのがもったいないというシンプルな発想で、農薬を使わない農業を目指すように、電力も自給自足で子どもからお年寄りまでいきいきと毎日を送れる地域を目指す。そのために昭和20年代に実在した小水力発電を復活させる。専門家との協力で、効率的な形状の水車を採用し、豊富な水資源のあるこの地域特性を最大限活用。またソーラーパネルづくりのワークショップや、防災対策など地域の住民との交流も定期的に行い、「食べてもおいしいエネルギー」を合言葉に理解と協力を進めていきたい。
<会場から>
Q:水車の制作費について
A:すでに地域の方から提供準備がある。合意を重ねており気持ちもつながっている。
<審査員から>
【蒲生】プレゼンのビジュアルも良く、移住したい気分になった。場所からいくと100%子どものためにというのは外せないポイントだと感じた。今後シェアハウスの供給数を増やしつづけられるようなしくみを考えてみてほしい。全国でも同様の動きがあるが、1世帯分で終わってしまっておりもったいない。ショートステイでおためし出来るようなしくみを考えているようなのでぜひ実現してほしい。
【國中】
地域をあげて活動している様子がわかり、とても興味深い。居住者が増え、子どもも増えて世代間交流が活発になる予感。小水力発電というのもマッチしている。ソーラーのワークショップなど継続して進めてほしい。
【佐久】プレゼンの内容がわかりやすい。「たべてもおいしいエネルギー」という水から生み出される食材とエネルギーというコンセプトが「野中の名水」にストーリー性を持たせると更に発展できる。反面、完全に独立した自給自足となると現実的な発送電のコスト面の問題が出てくるのでそのあたりも考えてみては。

地域利用可能な充電ステーション創設 (リーダー:山田和生さん)
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<発表概要>
今後考えうる3つの心配事「エネルギー問題」「環境破壊」「防災対策」への市民レベルでの対応を考え、この企画が立ち上がった。特に地球温暖化問題への対策を考えた時に、和歌山県で車からの排気ガスによるCO2排出量が4割以上と高い。「電気自動車」というひとつのキーワードに連動して、地域の充電設備が増えることで需要が伸びクリーンなまちづくりに繋がると考えた。電気自動車のメリットは、災害時に移動式の蓄電池となる点。今回の特徴は「エネルギーコストの循環」。まず充電ステーションの屋根部分に太陽光発電を設置。FITによる売電収入で維持管理を行う。設備内の蓄電池には買電か太陽光から取り込む。電気自動車へは有料で充電し、その収入でランニングコストを賄う。用地手配は、道の駅、商業施設、公共施設などからの借用。充電設備は、運営法人を立ち上げ、政府の補助金を一部費用に充て賄う。また、市民共同出資による建設なども計画し拡充していきたい。
<会場から>
Q:まちぐるみで取り組む上で、競合となりうるガソリンスタンドとの兼ね合いは
A:考えている。スタンド自体も付加価値のあるサービスとして導入検討中。当然、消防法などに準拠した設備設計も考える。
<審査員から>
【蒲生】未来のクルマはやがて電気で動く時代になるという漠然としたイメージはあるが、充電設備はどうなのかという点で、イニシアティブがとれると思う。CO2排出40%対策というアピールポイントも良い。さらに電気自動車利用者の体験談が見えるようになると取り組みが大きく前に進められると思う。
【國中】個人的にハイブリッド車を選択した経緯からも電気自動車購入の躊躇はまだ大きいように思う。なので、普及に向けた動きは喜ばしい。充電施設が増えれば観光面でも有利だと感じた。施設ごとに無料と有料が混在しているとのことなので、競争力の面で抜きん出るしくみづくりがあると良いのでは。
【宮崎】「地域」を意識した考えが及んでいる点は良いと思う。エネルギーコスト循環で検討しているが、直流電源を交流化させるなどで施設内循環も可能なのでは?また、補助金以外も含めて行政機関が関わるメリットについて詰めた検討をしてみて。

最後に審査員からの総評がありました。
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【蒲生さん】
和歌山という地域資源を活かした内容がとても充実していました。この内容をNPO活動のお母さんたちに持ち帰って、それぞれの地域ではこんなことをしていると伝えたいと思います。

【國中さん】
まちエネ大学ということで、再エネ事業に特化したものばかりと思っていたが、地域づくりをベースにしたものが揃って出てきたことに地域の金融機関の立場としても嬉しい。我々が支援できることを念頭に置いて活動していきたい。みなさんの頑張りを期待します。

【佐久さん】
「再エネ」というキーワードで直接見えてくるものは単に事業としてどうかということになるが、地域のいろいろな問題が横たわっており、それに刺さるように展開しているという流れを知ることができ、とても勉強になった。それゆえに問題解決の重要性を軸に展開してほしいと思う。「再エネ」にこだわると、さまざまな点で縛られてしまうおそれがある。なので、幅広い視点ですすめてほしい。「まちエネ大学」というスタイルのいいところは、業界の垣根を超えて素直な意見交換が出来るところ。立場や利害関係を伴わずに交わせる場があることで新たな気付きや学びを得られる。今後もこういった関係を構築できれば、より地域に根ざした取り組みになっていくと思う。東京から今後のみなさんの活躍を期待します。

そしていよいよ、資源エネルギー庁の佐久さんから、修了証書の授与です。証書を受け取りながら、この4ヶ月間をやり終えて少しホッとした表情の中に、力強くかがやくみなさんの眼差しがとても素敵でした。受講されたみなさん、おめでとうございました!

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まちエネ大学スクール最大、8つの事業すべてがこうしてスタートラインに立ち、それぞれの地域課題と向き合いながら、夢の実現を目指して1歩を踏み出していきます。どんな人達を巻き込んでいき、その波がどんな大きなパワーになっていくのか。これからとても楽しみです。