スーパーまちエネ大学Part2 再エネ地域プロデューサーになろう!
- 2015.01.06
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全国各地のまちエネ大学修了生と受講生の皆さんが一堂に会して一緒に学び、交流を深める「スーパーまちエネ大学2014@東京大学」が、12月20日、21日の2日間、東京大学駒場キャンパスで行われました。
初日の金融をテーマとしたシンポジウム「地域再エネ事業を軸とした地方創生の金融価値創造の機会」に引き続き、2日目のテーマは「再エネ地域プロデューサーになろう!」。雨上がりの駒場東大キャンパスに、再エネへの熱い想いを持った受講生が続々と集まってきました。今回はまちエネ大学修了生・受講生も交えて、各スクールからの知見やノウハウの共有の場にもなりそうです。
ファシリテーターは、まちエネ大学プレイベントでお馴染みの、ドリームコーチドットコム代表・組織変革コーチの吉田典生さん。
今回は、サブファシリテーターとして、現在開講中の宮城・仙台スクールのファシリテーター・清水毅さん(トーマツ)、同じく京都スクールのファシリテーター・下村委津子さん(認定NPO法人環境市民)と南村多津恵さん(くうのるくらすの創造舎)にもサポートいただきました。
清水さん
下村さん
南村さん
発電事業者、地域プロデューサー、自治体、市民サポーター、地域金融機関と多様なプレーヤーが結びついて生まれる、地域協働型再エネ事業。
このセッションでは、そんな事業の仕掛け人となる「再エネ地域プロデューサー」のトップランナー、一般社団法人徳島地域エネルギーの理事・事務局長の豊岡和美さんをゲストに招きお話を伺いました。豊岡さんは3年間の間に20カ所の発電所をプロデュースした実績を持つ、凄腕スーパーレディーです。
「地域と再生可能エネルギー(コミュニティ・ハッピーソーラー)」 一般社団法人徳島地域エネルギー 理事・事務局長 豊岡和美さん
徳島県は人口が80万人を切り、人口減少の進む中山間地を抱えた典型的な地方自治体です。2000年に行政側からダム建設計画が発表され、吉野川可動堰問題が勃発。国の予算がつき、県も市も推進の立場をとっていましたが、市民が「自分たちのことは自分たちで決めたい」と声をあげ住民投票を実施したところ、55%の投票率で91.64%が反対、この問題は白紙に戻されることになりました。国の方針に左右され、住民感情とミスマッチした計画に振り回される。お金も人材も少ない地方ではそういったことが常です。しかし、地域にはもっと多様な生き残りの道を描いていけるはずだと、豊岡さんは語ります。そして、その上で大切なのが、環境保護の視点からだけではなく、経済や暮らしとの結びつきから考える視点を持つことです。
豊岡さんは、有志らとともに平成23年に産官学民による徳島再生可能エネルギー協議会を設立。翌年には一般社団法人徳島地域エネルギーとして法人格を取得し、事業を起こす基盤をつくりました。「持続可能な地域づくり」をビジョンに掲げ、地域の持つエネルギーを地域で開発・利用し、地域の人々が利益を享受できるようコーディネートすることを目的に活動しています。
最初の事業は、徳島県に唯一残された村、佐那河内村での風力発電事業です。リスクヘッジも考えて2基(うち1基は市民風車などに)を設置予定で、現在機種を選定中。既存のウィンドファームに付加する形で、地元に利益をもたらす、住民協同型の村風車を設置することを目指しています。また、小水力発電にも着手し「電気代がゼロの村づくり」を実現しようと奮闘中。このプロジェクトが成功すれば、年間約7億円という村の電気代を削減し、地域活性化のために活かしていけるそうです。
吉野川市の診療所では、木質バイオマスの新技術を導入し、地元材を活用したCO2削減を実現。燃料を地元で調達し、浮いた燃料代を次の再エネ事業に投資することで、内部経済化を進めています。
また、メガソーラー導入による美馬ソーラーバレイ事業には、私募債で50万円、49口を募集し、日本政策金融公庫や徳島県制度融資、徳島県補助金などを活用し、総額3億7566万円の事業を展開しています。
徳島地域エネルギーは現在、トータルで約15MWほどのソーラー事業を手掛けています。その中でも、小規模で運営できるものを「コミュニティ・ハッピーソーラー」と名付けて、集まった寄付金に、地域特産品で返すという仕組みをつくり、現在県内5カ所で展開しています。
そのひとつが、先ほど紹介した佐那河内村での「みつばちソーラー発電所」事業です。村から残土処分場だった土地を借り受け、発電と特産品販売や、ビオトープづくりによる自然の回復にも取り組もうと、地元の建築事業者やWWFジャパン、ビオトープ管理士らの協力を受けて展開しています。
まちおこしイベントの予算(10万円ほど)も出せないほどの厳しい財政状況にある牟岐では、廃校などの建築物を活用しようと、ソーラー事業に着目。「ゆずの里発電所」をつくろうと寄付金を募集しました。当初は信用力がなく融資が受けにくい状況でしたが、交渉の末、信用金庫からの融資で事業を展開し、得られた利益のすべてを地域に還元することを目指しています。
鳴門市(県の温暖化対策センター)では、再生可能エネルギーのゾーニング計画のため、WWFジャパン、県の温暖化対策センターと提携。鳴門市は情報提供、WWFはゾーニングマップづくりで役割分担し、4社協定のもと事業がスタートしました。鳴門では、商工会の2代目の若手が、まちおこしに関心を示していて、廃棄物処理場をソーラー発電所にして運営するなど、まちの将来に夢を抱いて活動しているそうです。
徳島地域エネルギーの地域支援のポリシーは、地域のポテンシャルを地域の人たちと共に検討し、総合的な視点から取り組むこと。調査予算を関連省庁などから得て、信頼性の高い事業計画を設計してから、地域に事業展開を働きかけることです。直接事業を最小限におさえ、リスクを引き受けた上で事業計画を地域に渡すという、コーディネーターの立場を取っています。
「ビジョンを共有することで、皆が力を合わせて取り組むことができる」。
各地での経験から、豊岡さんはこう語ります。
地域のトータル再エネ化を支援することで、コミュニティ・ハッピーソーラーを全国に広げていきたいと語る豊岡さん。これまで、地銀とともに勉強を進めてきたことが評価され、現在では徳島のすべての地銀と提携し、低金利で融資を受けられる関係にあるそうです。
農業や環境のため都会から移住した人たちは、固定収入がないという課題を抱えています。徳島地域エネルギーは、そういった人たちの働き口の受け皿にもなりたいと、豊岡さんは考えているようです。
再エネで地域を元気にする。そんなたくさんの事例に、受講生も大変刺激を受けたようでした。
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豊岡さんのお話を受けて、各地で地域活性化事業に関わっている一般社団法人ロハスビジネスアライアンス共同代表の大和田順子さん、そして、数々の再エネ事業をプロデュースし、自らも発電事業を起こしているサステナジー株式会社代表の山口勝洋さんを交えてディスカッションを行いました。
豊岡さん:
「地域でどのように人々が結びつき事業を立ち上げていくかを考えることが大事です。徳島地域エネルギーでは、有志3人に専門家を加え、行政や金融機関ともつながりながらつくりあげていきました。全て自己負担で、寄付頼りで活動せざるを得なかった開発反対運動に比べたら、再エネ事業の苦労はバラ色の苦しみと言えます」
大和田さん:
「エネルギー、食、福祉が提供できれば、地域の方が暮らしやすい場所になってくる。今後は地域連携がキーになると言えるでしょう」
山口さん:
「各現場が連結することで知見が集まり、より大きな力となる、良い提携パートナーを見極めて進めることが大切です」
パネルディスカッションを受け、参加者全員参加のワークショップを実施しました。
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①「再エネ地域プロデューサーとは、どんな人か?」
②「再エネ地域プロデューサーには、どのような能力が求められるか?活躍できるには、どのような社会環境が必要か?」
という二つの問いから、熱い対話が展開され、以下のような意見やアイデアが導き出されました。
① プロデューサーとはどんな人か:
「地域の幸せを考えて行動できる人」「地域のふところに飛び込む力を持った人」「明るくて包容力のある人」「コミュニケーション力のある人」「バカもの、若者、よそもの」「ちょっとしたことではめげない明るい人」「人を巻き込む力にたけた人」「事業性を見出して、リスクをとる覚悟を持った人」「中立性とバランス感覚を持って動ける人」「発想力やネットワークを持った人」「半再エネ×半地域課題に関心のある人」
② 地域プロデューサーの活躍できる社会環境:
「再エネについて真面目に話せる社会的雰囲気をつくること」「エネルギーには関心がなくとも、地域活性への想いのある人を巻き込める場」「再エネに関する全国連携が必要であり、まちエネ大学にそういった機能を期待したい」
参加者の中には、「障害者福祉の仕事と再エネを組み合わせた事業を起こしたい」という方や「環境エネルギー室を設置して、市をあげて再エネの振興を目指している」という富士宮市の職員の方もいらっしゃいました。
また、まちエネ大学の仕掛け人、内閣府まち・ひと・しごと創生本部参事官(前資源エネルギー庁新エネルギー対策課長)の村上敬亮さんからは「本当に実現させたかったら、人を頼ることや、自分のコミュニティにない仲間をつくることも大事。このテーブルで出会った人たちとも今後もつながり続けて欲しい」との言葉がありました。
村上さん
最後に、ゲストの豊岡さんから「事業規模にとらわれずに、地域にとって一番ためになることは何か、ぶれないビジョンを持って取り組んで欲しい」、大和田さんから「地域の人のポテンシャルを引き出し、多くの人を巻き込みながら、ビジョンを持って進めて欲しい」、山口さんからは「勇気を持って正論を語りながら、自信を持って動き続けて欲しい」とのエールがありました。
会話によって関係性が育まれ、志向の質が上がり、行動が生まれ、結果の質があがる。こうして成功の循環モデルを巡らせていって欲しい。ファシリテーターの吉田さんからのこういった振り返りとともに、盛況のうちにスーパーまちエネ大学は幕を閉じました。ここから生まれる新しい人と人との出会い、再エネについての知見の共有に期待しています。